アウトレイジ ビヨンド(ネタバレ)
「アウトレイジビヨンド」の感想です。ネタバレしてるので、気をつけて!
前作「アウトレイジ」感想
https://tatakaiudon.seesaa.net/article/201006article_5.html
水面から自動車が引き上げられている。空中に持ちあげられ、車内にたまった水が隙間からこぼれおちる。
乗っていたのは、暴力団山王会と国交相のつながりを捜査していた刑事。この五年間で経済ヤクザとして急成長を遂げ、政界にまで深く食い込んだ山王会に消されたのだ。事態を重く見た警察は、小日向文世扮する対暴刑事片岡を現場復帰させる。片岡は山王会に向けては事件の揉み消しを図るいっぽうで、ひそかに山王会つぶしの計略を練りはじめる。
というわけで、前作で最も悪辣だったのは、子分たちを殺し合わせた北村総一朗演ずる山王会会長だったけど、今回の黒幕は刑事片岡だ。新会長加藤の元、世代交代が進み、大友組の金庫番だった石原が若頭となり、また先代の警護役だった舟木が大幹部に収まっている。古参幹部たちは、金儲けの才覚だけで成り上がった外様の石原を憎み、不満を募らせている。
片岡は、そんな幹部たちを焚きつけて、内部分裂を図るが、失敗。つぎの作戦は、五年前に組を潰され、山王会を恨んでいるはずの、大友と木村を結託させることだった。
前作では激しく憎しみあっていた大友と木村は、歳月を経て事件の裏側を理解し、過去を悔い、たがいに通ずるものを感じはじめているらしい。兄弟の盃を交わしたふたりの友情が物語の核となる。
元ヤクザふたりがつるんだところで巨大組織が崩れるとは思えないが、山王会の弱点はかつて大友を裏切った石原だ。彼を心理的に揺さぶるというのが片岡の作戦だろう。そしてもうひとつ、加藤が先代を殺したのではないかという噂が流れはじめる。
いまごろになってそんな怪情報が出てくるというのは、推測するに片岡が発信したものではないだろうか。おそらく片岡は五年前に真相を見抜いたうえで、わざと事件を握りつぶして加藤の会長就任を黙認したのだろう。加藤と石原は、ともにおのれの父親殺しというべき罪業に苛まれているはずだ。まんまと策に嵌まり、巨大組織はついに崩壊の兆しを見せはじめる…
といったお話しなのだが、「全員悪人」という惹句のわりには、登場人物たちはそれほど悪人にはみえない。前作で石橋蓮司がやってたヤクザの親分なぞは、虐げられる小市民といった感じだったし、国村隼も悪いというよりはセコいといったほうが当たってるだろうし、三浦友和の若頭加藤も、手下を殺し合わせる極悪な会長をみていたら、そのうち自分も殺されると感じて、自己防衛で親分を殺したのだろう(石原に唆された可能性も高い)。
劇中、暴力団との関連が知れたら内閣がふっとぶ、というセリフがあるのだが、野田佳彦は暴力団からも外国人からも献金を受けていると噂されるのに、いっこうに潰れる気配がない。アメリカの後押しさえあれば、どんなに無能で卑劣で腐敗しててもやっていける。現実世界のほうがはるかに薄汚いのだ。
前作の感想に、小日向文世の容姿が宮崎県知事(当時)を思わせると書いたが、たけしの後輩でボクシングをやってて名前が片岡だったら、とうぜん鶴太郎も連想される。ちなみに前作に出てきた殺されるポン引きの役名が飯塚で、これはダンカンの本名だ。たけしが弟子に「殿」などとよばせるのも、なんらかの複合観念があるのだろう。さらにいうと塩見三省が扮する関西ヤクザの幹部が中田とくればカフスを思い出すだろう。頻発される「バカ野郎この野郎!」というセリフも、たけしの、てゆうか、たけしの師匠だった深見千三郎の口癖だったはずで、北野武はこの言葉をさまざまな俳優に口伝することで師を懐かしんでいるのではないだろうか。北野は深見千三郎と浅草フランス座を映画にするべきなのだ。
全体的にじゅうぶん見応えはあったけれども、やや物足りなかったのは、宣伝では準主役かと思われた西田敏行が、まあ特別出演といっていいぐらいな扱いにすぎなかったこと。たけしと西田は同い年で、大学もいっしょだったのだな。そういえば俺は十代のころ、たけしのオールナイトニッポンと、西田(西やんと呼ばれていた)のパックインミュージックを聴いていたっけ。あと西田の関西弁がうまくなく、堂に入ってないこと。関東×関西の抗争勃発といいながら、じっさいは一方的な展開で終わってしまうこと。
しかし関西ヤクザのほかにも、新たな大物が登場したり、もしかすると三作目の構想があるんじゃないかとみえなくもない。二作で打止めにしといたほうがいいとも思うが、どうなるのだろうか。
前作「アウトレイジ」感想
https://tatakaiudon.seesaa.net/article/201006article_5.html
水面から自動車が引き上げられている。空中に持ちあげられ、車内にたまった水が隙間からこぼれおちる。
乗っていたのは、暴力団山王会と国交相のつながりを捜査していた刑事。この五年間で経済ヤクザとして急成長を遂げ、政界にまで深く食い込んだ山王会に消されたのだ。事態を重く見た警察は、小日向文世扮する対暴刑事片岡を現場復帰させる。片岡は山王会に向けては事件の揉み消しを図るいっぽうで、ひそかに山王会つぶしの計略を練りはじめる。
というわけで、前作で最も悪辣だったのは、子分たちを殺し合わせた北村総一朗演ずる山王会会長だったけど、今回の黒幕は刑事片岡だ。新会長加藤の元、世代交代が進み、大友組の金庫番だった石原が若頭となり、また先代の警護役だった舟木が大幹部に収まっている。古参幹部たちは、金儲けの才覚だけで成り上がった外様の石原を憎み、不満を募らせている。
片岡は、そんな幹部たちを焚きつけて、内部分裂を図るが、失敗。つぎの作戦は、五年前に組を潰され、山王会を恨んでいるはずの、大友と木村を結託させることだった。
前作では激しく憎しみあっていた大友と木村は、歳月を経て事件の裏側を理解し、過去を悔い、たがいに通ずるものを感じはじめているらしい。兄弟の盃を交わしたふたりの友情が物語の核となる。
元ヤクザふたりがつるんだところで巨大組織が崩れるとは思えないが、山王会の弱点はかつて大友を裏切った石原だ。彼を心理的に揺さぶるというのが片岡の作戦だろう。そしてもうひとつ、加藤が先代を殺したのではないかという噂が流れはじめる。
いまごろになってそんな怪情報が出てくるというのは、推測するに片岡が発信したものではないだろうか。おそらく片岡は五年前に真相を見抜いたうえで、わざと事件を握りつぶして加藤の会長就任を黙認したのだろう。加藤と石原は、ともにおのれの父親殺しというべき罪業に苛まれているはずだ。まんまと策に嵌まり、巨大組織はついに崩壊の兆しを見せはじめる…
といったお話しなのだが、「全員悪人」という惹句のわりには、登場人物たちはそれほど悪人にはみえない。前作で石橋蓮司がやってたヤクザの親分なぞは、虐げられる小市民といった感じだったし、国村隼も悪いというよりはセコいといったほうが当たってるだろうし、三浦友和の若頭加藤も、手下を殺し合わせる極悪な会長をみていたら、そのうち自分も殺されると感じて、自己防衛で親分を殺したのだろう(石原に唆された可能性も高い)。
劇中、暴力団との関連が知れたら内閣がふっとぶ、というセリフがあるのだが、野田佳彦は暴力団からも外国人からも献金を受けていると噂されるのに、いっこうに潰れる気配がない。アメリカの後押しさえあれば、どんなに無能で卑劣で腐敗しててもやっていける。現実世界のほうがはるかに薄汚いのだ。
前作の感想に、小日向文世の容姿が宮崎県知事(当時)を思わせると書いたが、たけしの後輩でボクシングをやってて名前が片岡だったら、とうぜん鶴太郎も連想される。ちなみに前作に出てきた殺されるポン引きの役名が飯塚で、これはダンカンの本名だ。たけしが弟子に「殿」などとよばせるのも、なんらかの複合観念があるのだろう。さらにいうと塩見三省が扮する関西ヤクザの幹部が中田とくればカフスを思い出すだろう。頻発される「バカ野郎この野郎!」というセリフも、たけしの、てゆうか、たけしの師匠だった深見千三郎の口癖だったはずで、北野武はこの言葉をさまざまな俳優に口伝することで師を懐かしんでいるのではないだろうか。北野は深見千三郎と浅草フランス座を映画にするべきなのだ。
全体的にじゅうぶん見応えはあったけれども、やや物足りなかったのは、宣伝では準主役かと思われた西田敏行が、まあ特別出演といっていいぐらいな扱いにすぎなかったこと。たけしと西田は同い年で、大学もいっしょだったのだな。そういえば俺は十代のころ、たけしのオールナイトニッポンと、西田(西やんと呼ばれていた)のパックインミュージックを聴いていたっけ。あと西田の関西弁がうまくなく、堂に入ってないこと。関東×関西の抗争勃発といいながら、じっさいは一方的な展開で終わってしまうこと。
しかし関西ヤクザのほかにも、新たな大物が登場したり、もしかすると三作目の構想があるんじゃないかとみえなくもない。二作で打止めにしといたほうがいいとも思うが、どうなるのだろうか。
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